私は琴欧洲が好きで嫌いだった

私は琴欧洲が好きで嫌いだった。
今日12日目を終えて、大関琴欧洲はただ一人12戦全勝。初優勝に向けて突き進んでいる。
私は琴欧洲関が好きだった。
破竹の勢いで番付を駆け上り、朝青龍時代を終わらせるのは彼だとさえ感じていた。結局朝青龍時代を終わらせたのは後から駆け上ってきた白鵬になったが…。
朝青龍琴欧洲白鵬。この3人が、まるで10年前の貴乃花・曙・武蔵丸の3人が場所ごとに賜杯を奪い合っていた時代を再現してくれると信じていた。
だが、私は琴欧洲関が嫌いになった。
怪我は仕方がない。しかし、怪我が治っても調子が上がらない一方なのに腹が立ち、立会いの変化や腰が高い相撲ばかりで失望した。廻しを変え、四股名を変えても結局同じ。
そのうち、大関に甘んじていると思うようになった。
他の大関も不甲斐無い場所が続く。それは事実だが、現在大関魁皇千代大海琴光喜琴欧洲である。琴欧洲以外の力士は30代の高齢力士ばかり。頑張ってもらいたいが、仕方がないとも言える。
だが琴欧洲はまだ25歳。大関に昇進した時は22歳だ。
何を高齢大関に合わせて負けているんだ。大関なんて辞めてしまえと何度も思った。
実際、角番の時はいつも琴欧洲の相手力士ばかり応援した。
大関という地位に甘んじているのなら、その根性を叩き直すためにも一度陥落したほうがいい薬になると思っていたからだ。
今場所も同じだった。場所前から7日目まではアンチ琴欧洲になっていた。
そして中日。変化で稀勢の里を破り角番脱出。心底残念に思った。
「どうせこれから負けが続いて、結局いつも通りの何とか勝ち越しただけの成績に終わるんだろ?」
だが今場所は違った。勝ち越しが決まっても腰を落として前に出る思い切った相撲が続き、その勢いは昨日朝青龍相手に完璧な相撲を見せてくれた。
そして今日。相手は白鵬。優勝候補No.1の力士だ。1敗差なんてハンデに思えなかった。私は今場所は白鵬が優勝すると確信していた。
だが、その確信が破られる事になった。
琴欧洲がまたも完璧に横綱を破った。
私は思わず、TVの前で叫んでいた。
今、私は琴欧洲に期待している。
先場所までの不甲斐無さは消えた。今場所はその体躯を生かしたすばらしい相撲が続いている。
まだ優勝が決まったわけではないが、ぜひ今場所優勝し、番付を駆け上った頃の強い琴欧州を思い出させて欲しい。
次代の横綱を目指し、邁進してほしい。そして、数年遅れになってしまった青・白・欧時代を築いて欲しい。